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2014年5月12日 (月)

『送り人の娘』

(作:廣嶋玲子  刊:角川書店(2010))
 体を離れた魂を、黄泉の国へと送り届ける役目を担う送り人。生まれたその日に両親を失った少女伊予は、送り人の後継者として育てられる。13になった伊予は、ある日死にかけた狼を蘇らせてしまう。それは、送り人には禁じられた技だった。そのために黄泉を統べる大女神の怒りを買い、いっぽうで、よみがえることで永遠に生き続けようとする猛日王に狙われることに。追い詰められた伊予は、生き延びることができるのだろうか。
 年老いた送り人が後継者を探すところから始まった物語は、思わぬ展開を遂げていく。死、蘇り、力、復讐、赦し、再生。伊予は、望んだわけではない運命の流れに放り込まれ、溺れそうになる。その流れを泳ぎ切る助けをするのは、彼女の魂に惹かれたものたちと、その魂を彼女の中に育て上げた真由良への愛だ。大昔の神々の諍いのとばっちりともいうべき理不尽な目にも遭わされ、なぜ伊予がそれに立ち向かわなければならないのだという場面もあるが、伊予はあきらめることなく、なすべきことを考える。その強さがなければ、そもそも送り人にもなれなかったのだろうが。
 物語の流れに対してラストが軽い気がしないでもないが、世界がしっかり作り込まれた作品として、評価できる。この作者の世界をもっと読みたいという気にさせる作品だ。(2013.9.15)
 
 

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